2009-09-30

自動車の蓄電に必要な太陽電池の面積

地球軌道付近で太陽光に垂直な単位面積あたりに供給するエネルギー量を太陽定数という。
S= 1365 W/m2 
地球軌道上の人工衛星の太陽電池はこのエネルギーを利用できる。光子の数にして1平方メートル・秒あたり6×10の21乗個になる。地球には大気や雲がある。エックス線は殆どが大気で遮断される。また有害な紫外線も成層圏のオゾン層で90%以上がカットされる。可視光線、赤外光も、大気圏中での反射・散乱・吸収などによって平均4割強が減衰する。緯度や季節、時刻により大気を通過する距離が変わる。

日本の緯度はN35度であるので、南中時の太陽高度は冬至は31度夏至は78度である。

南中時の太陽光のエネルギーは以下のようになる

冬至 s=S×sin31.6°= 709.8 W/m2
夏至 s=S×sin78.4°= 1338 W/m2

そこで、中間をとって、日本での太陽光のエネルギーは1平方メートル当たり約1kWとされている。
また、大気や雲の影響による反射・吸収で40%程度費やされる。

メーカーにより多少違うが、太陽電池の効率は17%程度であるので太陽電池の出力を見積もるときは1平方メートル当たり0.1kWの数字を使えばよい。
また、平均日照時間が4時間とすると、リチウムイオンバッテリーの容量25kwhを家庭で太陽電池から充電すると必要な太陽電池面積は約61平方メートルである。

一般家庭の電力消費量は、4,000kw/hであるから、
61x4x0.1x365=8,906kwh
となり一般家庭で使う電気の2倍の容量の太陽電池が必要である。

2009-09-29

自動車に必要なエネルギーとバッテリー容量と燃費

自動車を走らせるのに馬13頭が必要と仮定する。つまり13馬力くらいあれば高速道路を時速100kmで走れるとする。ワットにすると大体10kwである。これくらいのモーターを備えれば電気自動車が高速道路を走れる。もちろん、急加速や坂を急いで上らなければならないので、瞬時の馬力は50kw位は必要になるのであろう。



ヤマハのゴルフカートは2.8kwのモーターで時速19kmで走れ登坂能力も20度あるからもうすこし頑張れば自動車になる。

時速100kmで2時間走行すると200kmの距離を移動できる。途中発進加速や山があり、また冷房や電子コントロールなど他にもエネルギーを使う。そのために5kwhの電気を使うとすると、自動車が2時間動いたときの必要エネルギーは25kwhである。

つまりバッテリー容量が25kwh必要になる。

家庭の電気を使い2kwで充電すると13時間かかる。
家庭では、電池のためにたくさん電気を供給するのは難しいし、バッテリーはキャパシターと異なり瞬時の蓄電ができないので13時間位が必要になるのである。

1kwhの電気の値段は家庭では23円位である。25kwhの電気代は580円になる。

電気では、460円で100km走れる。一方ガソリンで燃費が15km/lとするとガソリンが7リットル必要になる。
ガソリン価格が130円とすると、910円かかる。

電気自動車の燃費はガソリンの55%位であると言える。

家庭で1日に使う電気量は13kw程度である。電気自動車バッテリーは家庭で使う電気の2日分のエネルギーを使う。電気が今より3倍必要になると電力不足になる。
従って、電気自動車が全ての自動車が全家庭に普及するためには、発電所の増設が不可欠である。




ZENNの電気自動車

2009-09-28

本命はプラグインハイブリッド

今年になって、3代目プリウスは爆発的に売れている。私は2代目プリウスを昨年購入した。エコ減税が無くても購入した。購入の動機は燃費もあるが、自動車メーカーに勤務した技術者として、新しいメカニズムの車に乗りたい好奇心である。プリウスに乗って、電気自動車感覚にすっかり魅せられてしまった。一定速度で走るとエンジンが止まり、モーター走行になる。静かで滑らかな走行。これが心地よいのである。プリウスに乗ると、これまでの車の運転モードが変わってしまう。急な加減速はしなくなる。しかし、高速道路ではいつも追い越し斜線を走りたくなる。そのときはエンジンで走っているのだが、静かである。

エンジン、モーター、ダイナモ、スプリッター、コントローラー、高額バッテリーと普通の自動車より、部品点数が多いので、高く売れる。私を含め大部分のユーザーはプリウスは、今までの自動車とははっきり違うと認識している。モーターで走る、静かさと、加速、そして値段の高さにブランド価値を見出している。従来のエンジンの高級車や外車などはもう乗れなくなるのである。

プリウスは、ユーザーにとっても、地球温暖化要因の二酸化炭素ガスを減らし地球を守る意味でも、高い車を売ることができ自動車会社が儲かるためにも最善の選択である。

しかし、同じハイブリッドでもホンダのインサイトはモーターだけで走れない。モーターアシストで燃費は良くなったが、モーター走行の快感を与えてくれず、通常走行のエンジン音も気になる、今までの概念の車である。燃費とエコ減税で購入しているが、モーター単独で走れないのは明らかにプリウスより劣る。現在は売れているが、モーター走行ができるプリウス型に移行すると思う。

プラグインハイブリッド車は、3代目プリウスの電池を単に増やすだけで簡単に達成できる。しかし、日本の家庭の駐車スペースでは電気で充電するのが面倒である。アメリカのように日本の2DKに相当する広さのガレージと220ボルトの電源があれば、充電が容易だ。

アメリカでプラグインハイブリッドがはやった後に日本の家庭が自動車バッテリーに電気をプラグインするようになるのではないか。

アメリカでは、カリフォルニア州であらたにゼロ排ガス車法が2009年成立した。この法規は、2003年に廃案になった法規をいじってまた復活させたものである。

ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池車、電気自動車、水素ガス、メタノールなどオプションを用意している。

本命は何か。ずばりプラグインハイブリッドである。

2009-09-25

GMがEV-1を殺したいきさつ

GMはかつて路面電車を潰した。過去の成功体験から、ゼロ排ガス車法つまりEV-1を潰し、SUVを売れば利益が確保できると考えた。最初その戦略は成功した。ほどなくGMACのローン販売焦げ付きと、SUVが売れなくなったため連邦破産法の適用を受けた。しかし、たくましく売りつけるのが米国。
再び、PHVボルトを登場させ、燃費230マイルの宣伝を大々的に開始した。今度は、石油会社も部品会社も共存できる。オバマやシュワルツネッカーと協議し、米国の利益を守るため、米国製のPHVは売りやすいが日本車と欧州車をブロックする作戦を練っているに違いない。

GMがEV-1を殺したいきさつは下記のとおり。




GM
EV-1やHVでは利益が出ないので、ゼロ排ガス車法を潰し、儲かるSUVを売る作戦に変更した。
利益がでないばかりか、電気自動車のシンプルな構造では自社の部品会社がつぶれる恐れがあった。
ガソリン車で使っている60%の部品は不要になる。例えば
エンジンに燃料を送るインジェクション
エンジンの動力を伝えるトランスミッション
ガソリンタンク
排気パイプ
オイルフィルターやオイルが売れなくなる。
EV-1のメンテナンスといえばタイヤ交換とウオッシャー液の交換くらいだ
ハマーを買収し、EV-1の減税額は4,000ドルだったが、ハマーのように6,000ポンドを超える車は100,000ドルの減税を獲得した。
買収した電池会社を石油会社に売り抜けた。石油会社は自分の商売敵である、電池を売る意欲は初めからなかった。
EV-1は消費者に指示されていないという無理な理由であったがゼロ排ガス車法を無効と提訴した。
一方、燃料電池車が本命であると宣伝。
しかし、燃料電池車はドッグレースの前を走る、ロボットのうさぎと同じで決して追いつけない事を知っていた。唯、燃料電池車ができるまで待ってくれと世間に宣伝し、時間稼ぎをしてその間にSUVで儲けたいと考えた。
EV-1が注目されるのを防ぐため、提訴が成功すると一台残らず、直ちに回収し、スクラップにした。博物館展示車も撤去した。

石油会社
自動車燃料を独占的に販売を続けたかった。したがって、多額の税金を払っているカリフォルニア州にEV-1用電気スタンドは税金の無駄使いと反対した。
燃料電池車ならば、石油会社の儲けは確保される。なぜならば、石油から水素に改質することができるためである。

ブッシュ政権とロビイスト
大口献金者の石油会社と自動車会社の意を受け、ゼロ排ガス車法は燃費規制であり連邦法に抵触し無効であるとGMの提訴をバックアップ。


CARB
委員長のアランロイドは水素ガス会社出身で電気でなく、水素推進派であった。
インフラを電気スタンドでなく水素スタンドにしたかったため、GMの提訴に賛成した。

シュワルツネッカー
カリフォルニアの停電を経験した知事は、水素エンジンハマーで水素と大型車をアピールした。



GMはかつて路面電車を潰した。自動車が非常に人気になりGMはどんどん力をつけ
ますます事業を拡大していこうとしていた。
GMは商売のじゃまになる路面電車の会社を片っ端から買収してつぶした。
車のじゃまになる線路をはがし、架線を取り外し、路面電車をスクラップにしていった。
そして路面電車はバスに置き換えられた。
こうして公共交通機関が不便になり、ますます自動車が普及していった。

2009-09-22

誰がEV-1を殺したか?行動する勇気を学ぶ

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誰がEV-1を殺したか?というドキュメンタリーが有名である。企業の経営上殺された電気自動車が、今度は企業の経営上誕生させられている。石油依存からの脱却、地球温暖化はすぐ解決しなければならない時期が来た。
今、誰がEV-1を殺したかを見直し、どのようにしたら良いかを学んでほしい。Youtubeにあったのであらすじを紹介する。EV-1ユーザーやGM、ブッシュなど利益代表者は自らの戦略を、シリアスにかつ滑稽に見えるかもしれない方法で実行した。EV-1ユーザーはEV-1をポンコツにしないよう立ち上がり、GMはコストの高いEV-1は経営上不利と判断し、EV法の廃止を迫る訴訟を起こした。ブッシュも応援した。シュワルツネッカーもハマーで大型車を応援した。単にGMやブッシュは自分の利益だけ考え、エコを推進しない悪者であるという一方向のみで決め付けてはいない。程度の低い政治家や低俗マスコミに汚染されてしまった日本人の若者は、他と違うことを言うと空気が読めないとか言われて排除される。エコは官僚、企業の都合の良いCSR宣伝、人権派と称する人が、テレビで述べる一方的な情報に惑わされやすいので特に注意が必要である。英語を学び、低俗マスコミでなくもっと多くの真実を知り、意見を述べ行動する事が必要である。国民の真の不利益まで考えが及ばない官僚や、教授や政治家に任せるのは危険である。特に、教授を利用する官僚には自戒してもらいたい。視聴率頼みの低俗番組や票取り政治家の言動は、エンターテイメントとしてただ楽しむだけにしよう。日本の国力はすっかり落とされてしまった。起業家である我々は、EV-1ユーザーや、GMやブッシュや、シュワルツネッカーやトム・ハンクスように堂々とかつユーモアと創意工夫して啓蒙し、日本の閉塞感を打破し、経済を発展させる行動を起こしたい。アメリカでは日本のように議員は偉いと認められていない。小間使いである。給料も安い。書生っぽい民主党議員や、各県知事は全く頼りにならない。カリフォルニアの自由な行動力がグーグルを生み出した。カリフォルニアのインテリやセレブの行動は真摯で滑稽では決してない。格好良いのである。

物語あらすじ、

ロスアンゼルスは、排気ガス、工場からの煙、強い日光で町全体がスモッグに覆われている。
雨が少なくからっとしているため、普段はあまり気にならないが、飛行機でロスアンゼルスに近づくと、
町全体が青白くかすんでいる。また、光化学スモッグの健康被害が始めて報道されたのもロスアンゼルスである。光化学スモッグによる健康被害を防ぐため、世界最初にカリフォルニアで自動車排気ガス規制が始まり、次いで、連邦で排気ガス規制が導入された。カリフォルニアには独自で排気ガス規制を敷くことが認められている。
CARB(カリフォルニア大気資源局)はカリフォルニアの車からのCO2を減らすことを考え、1990年ZEROーEV強制法を立法化した。そのため自動車メーカーは1998年までに2%、2001年までに5%、2003年までに10%はZERO-EVを生産しなければならなくなった。

GMは1987年オーストラリアで行われたソーラーカーレースで優勝した。気を良くしたGMロジャースミスはEV研究を推進させた。ほどなく鉛蓄電池を搭載したEV-1をテストマーケットとして送り出した。
GMがEV-1を出したため、CARBはZEROーEV強制法が実現可能と判断した。

しかし、GMのビジネスとなるとEV-1は負担が重すぎた。政府の援助でEV-1を開発したのであるが、量産するにはコストがかかりすぎた。車の販売価格は900万円と見積もられたが、月5万円でリースされた。
GMは法に適合するかEV-1を作り続けるか、法を取り下げさせるかの方法を迫られた。
結局、両方で行くことになった。
鉛電池EV-1は650台生産された。1999年にはハーネスから出火するという理由でEV-1をリコールし、ニッケル水素電池に200件以上の特許を持っている会社を買収し、バッテリをニッケル水素電池にした。

しかし、EV-1は短期的には儲からないため、また、石油が売れないと困るブッシュ政権と組み、結局、GMは法を取り下げさせる戦略に絞り、直ちにCARBを提訴する戦略に変換した。

2001年2月GM、クライスラー、カリフォルニアディーラーはCARBにZERO-EV法は無効と提訴した。
理由は消費者が望まない車を強制する法規であるというもの。

自動車業界から多額の献金を受ける自動車ロビーストと呼ばれる議員やブッシュは、CARB規制が燃費を規制する法規とするとEPAに権限があるという別の理由でGMのCARB提訴をバックアップする。

GMの訴訟を受けすぐ、2003年1月ブッシュ大統領は12億ドルを水素ガス車の開発に供出とアナウンスし水素が今後の代替燃料であり、米国が日本をリードすると表明した。ブッシュは石油を改質して水素を作ることを知っていたため、水素を表明したのだ。

水素ステーションを各地に作り、石油会社と組んでZERO-EVの本命はEV-1でなく、水素ガス者や燃料電池自動車であると大々的に宣伝した。カリフォルニアで燃料電池車のフリートキャンペーンを開始した。

カリフォルニアシュワルツネッカー知事も電力をEVが多量消費するとまた、大停電を起こすであろうと心配したか、CARBの議長に水素会社の会長を招聘し、水素援護派でCARBをかためる。環境問題を訴える催しに颯爽と水素エンジンハマーで登場し水素をアピールもした。

バッテリーに電気を供給するスタンドの建設は税金の無駄使いと反対するグループが現れた。

個人の名前だけ載せ詳細を伏せたある消費者グループと称するものが、新聞にカリフォルニア州の税金は全てとは言わないが大部分は石油がまかなっていると石油業界をバックアップ広告。サポーターのリストがインターネットに載っていたが、真偽を確認するとネットからリストは削除されてしまった。

石油業界はEV用電力は石炭を使う火力発電所で発電するため、温室効果ガス5%増やし、NOXを700%増やすとEVを批判した。

 当初、高性能で環境にも優しいEV-1は羨望の的だった。とにかくスピードが速いから、反則切符切られるよとトム・ハンクスも大絶賛していた。ところがこの石油業界からの石炭火力発電は大気汚染の原因との声が上がってから風向きが変わっていった。

GMはEV-1には内燃機器が無いので、そういう商売が成り立たなくなる、ガソリンを使わない車だと世の中はどうなってしまうだろうか、トランスミッションが無いとどうなってしまうのか、金持ちだけがEVを買えるなど、EVのイメージを自ら悪くするネガティブCMをテレビで流した。

CARBで公聴会が開かれ、CARBはもはや環境保護庁(EPA)でなく企業利益保護庁(CPA)ではないかと痛烈に批判する人もいたが、EV擁護派が十分な数選ばれていない場で、走行距離が短く、充電に時間がかかるEV-1を消費者が支持しないという理由で、2003年4月23日ZERO-EV法廃案が決定された。

草の根キャンペーンで自動車安全・環境対策を自動車会社に強制して来た実力者であるラルフネーダーは言う。GMの歴史は技術者がリードするのでなく、執行者がリードする。彼らは長期の規制を達成する気はない。
規制が実行される時が来ると、困った何とかしてくれと政府に泣きつき緩和させる。それが戦略であると。

ハマーを買収してしまったGMは、燃費は悪いが頑丈、安全な車をなんとか売らなければならなかった。
ハマーは戦車ではないか。誰かを殺す車を売るなんてぱっぴらだという女性消費者もいたが。
大型ピックアップトラックはは儲かるため、それを売る戦略を徹底的に遂行したかった。

ZERO-EV法は無効の決定に基づき、GMはリース中のEV-1を市場から一台残らず回収し、ポンコツにせよという指令をディーラーに出した。EV-1のユーザーはEV-1は燃費も良く加速も良いEV-1を支持していたため、無理やり奪う事になってしまった。

サクラメントの工場を閉鎖し、EV-1営業マンを解雇した。

ニッケル水素バッテリーで200以上の特許を持っているスタンド オフシェンスキー社を買収したが、買収した株をテキサコに売ってしまった。石油会社はバッテリーをビジネス化することは決して無かった。
オフシェンスキーはシャンペンロードを期待したが全く期待はずれであった。GMに売らなければ良かったと言う。

しかし、カリフォルニア人ははいそうですかと引き下がらない。自らの信念のためEV-1を存続せよとサクラメント、ロスアンゼルスで抗議を開始した。有名人にはメル・ギブソンやトム・ハンクスもいた。

2003年7月24日カリフォルニアで回収される運命のEV-1をハリウッドの葬儀場に集め葬式行い、マスコミに取材させた。

伝統にのっとり、バグパイプの笛の音に先導され、EV-1がしずしずと搭乗し、米国旗がかけられる。花が添えられた。

お別れの言葉が述べられた。
EVはCARBのいうように全消費者に指示されていなかった。たった90%の人に支持されているだけだと皮肉とユーモアのあるスピーチもされた。いかにもカリフォルニアらしい。

回収されたEV-1のうち78台がGM私有地に集めらていた。GM授業員に聞いてもEV-1がどうなるか知らないという。インターネットでは、クラッシュされアリゾナ州のGMの車両試験地に放置されているという噂があった。
GMの車両試験地は立ち入り禁止のため、EV-1支援者はヘリコプターで現場に確認に行く。するとパーツを取ったり、リサイクルすることも無くアルミボディとモーターの高価なEV-1は無残にクラッシュされ野積みされていた。

EV-1のような貴重な車を、クラッシュする事も間違っているが、クラッシュした理由はもっと間違っているとオフシェンスキーは怒る。

EV-1だけでなくパームスプリングスではフォードの電気トラックも放置されていた。トヨタ、ホンダのEV-1もシュレッダーにかけられた。

アリゾナにEV-1がクラッシュされていることが分かったEV-1ドライバーは、70台カリフォルニアに残っているこの車がクラッシュされるは忍びないとして戻すようアクションを起こした。
EV-1の置かれている駐車場を24時間監視し雨の日も6時前の早朝からEVを殺すなと抗議を続けた。
駐車場にあるEV-1の車体番号を道に白墨で記入しデモンストレーションした。
何千人かのウェイテングリスト顧客の一部も参加した。

当然抗議にもかかわらずGMは答えなかった。EV-1搬送トレーラーの走行を邪魔した支援者は逮捕されてしまった。

2009-09-21

鳩山首相温室効果ガス25%削減とカリフォルニア州25%削減法

カリフォルニアは自ら行動を起こす。州の人口は全米50州で最も多い約3700万人。自らの力で連邦とは独自の法律を作り、リーダーシップをとり自国の州ばかりなく、カナダやオーストラリアの国には、直接、日本には連邦を通じ間接的に影響力を及ぼす。

州都サクラメントに設置されたCARB(カリフォルニア州大気保全局)は1960年代、米国で最初に自動車排ガス規制を実施した。CARBができたのは67年。連邦のEPA(環境保護局)設立は70年である。環境保護では、はカリフォルニアがリーダーシップを握り、連邦が追随している。

実際、州の排ガス規制は70年、世界で最も厳しい連邦規制(マスキー法)になった。この経緯から、米国ではいまもカリフォルニアだけに独自の排ガス規制を定めることが認められている。しかし、自動車メーカー、石油業界などの提訴で、時には却下され、時にはEPAが優先し、さらにまたCARBが新たな立法をするという繰り返しが行われる。

技術開発が必要であるので、CARB、EPAの動きはどのようになるのか正しく判断しないと自動車会社の存続に関わる。私は、1970年代、CARBの排気ガス規制がどうなるか、EPAの排気ガス規制がどうなるか、日本の本社に報告するため、ロスアンゼル市に駐在し情報収集した。単なる環境保護というムードからで無く、日本の自動車会社を存続の危機から守り発展させるため、利害関係者の情報を集め、判断しどうしたら良いのか報告した。

GMの破綻は、企業年金のキャッシュフローを稼ぐため、電気自動車CARB規制をブッシュと組んで廃案にしたことにあると私は見ている。明らかに対応を間違った

今、民主政権で問題になっている25%温室効果ガス削減のルーツもカリフォルニアにある。鳩山首相は日本が世界をリードとかいっているが、排気ガス規制については、日本はカリフォルニアの追随をしているだけである。日米の自動車メーカーは、カリフォルニア規制には、懸命の技術開発をし、時には提訴して現実の回答を示し、市場と排気ガス規制を両立させてきた。

環境保護では、ターミネーターシュワルツネッカー知事に対抗するにはよっぽど腕力と知力をつけてから戦わなければならない。一方欧州や、中国の巨人も虎視眈々と市場と自国の有利を狙っている。

カリフォルニア2006年9月に地球温暖化対策法では、2020年に温室効果ガス排出量を現状から25%、50年までにさらに80%減らすというものである。

州人口は急増しているので人口増による電力や燃料消費が増えることを考えると、排出量の25%削減は、実質的には50%減を達成しなければならない。

問題はその対策である。41%という最大の排出源である自動車につぎ22%を発電所が占める。
カリフォルニアは電気が不足している。時には電力不足から大停電を起こした。他州から電気の50%を分けてもらっていてもである。

そのために、再生可能エネルギーの利用を増やし、石炭火力からの輸入ゼロを目指している。再生可能エネルギーである風力発電のルーツは、80年代のカリフォルニアであったのである。さらに、全米で唯一、太陽光発電の大規模導入を進めている。


広大なモハビ砂漠に設置された太陽光発電所。太陽光をミラーで反射させ、循環しているオイルを熱し、蒸気タービンに熱交換させて、48.3メガワットの出力を誇る。近隣には出力150メガワットの設備もある。これで一般家庭6万軒の電力をまかなえる。

03年からは、電力販売に占める再生可能エネルギーの割合を毎年1%以上増やすよう電力業界に義務づけ、17年には20%を要望している。

今、日本で景観を壊し、回っていない風力発電や、市民の住んでいるところでは騒音を発する風力発電機が
各自治体や、工場のいたるところで建設されているが、カリフォルニアのように切羽詰った問題からの切実な現実的な技術でなく、日本では補助金がでるとか儲かるからとかエコブームだからとかいう観点では、解決しない。住民に負担をかけ失敗に終わる。

2009-09-17

プリウスの特徴と今後の自動車政策







私は現在プリウスに乗っている。2008年2月に購入したからもう1年半乗っている。
今までに、自家用車として購入した自動車はフロンテ360SS、
フォードトーラス、カルタスターボ、エスクード、ワゴンR、そしてプリウスである。
自動車会社勤務時代は参考車の性能を知るため、国産、外国のあらゆる車を試乗した。
いつも、マニアックな車が好きだったので、スズキでもターボ、エスクードを買った。
元勤務したスズキには申し訳ないが、ハイブリッド車を知りたくて購入した。

インサイトも調べてみた。
インサイトは言わば、電動アシスト自転車と同じメカニズムである。
モーターの出力が小さく、モーターだけでは走らなくて、エンジンをアシストする役目に徹している。
モーターが発電機を兼ねており、ブレーキ時は発電機になり、慣性の運動エネルギーを回収し
バッテリーに蓄える。
加速時、発進時にはモーターの力がエンジンをアシストしきびきびと動く。
部品点数がプリウスと比べると圧倒的に少なくなり、モータが小さくバッテリーも小さいので、原価が安いはずである。

プリウスのモーターは強力であり、2km程度ならばモーターだけで走ることができる。
人込の中を走るような低速では、エンジンが停止しておりモーターで走る。
その場合音が静かであるので、周りの人に注意して走らなければならない。
また、時速60km程度を維持すると、モーター駆動だけで走れる割合が増え、燃費がリッター30km程度にまであがる。
街中を走る普通の燃費はリッター23km程度である。
乗ってみて最大のメリットは、燃費もあるが、
私は、モーター駆動の静かさとトルクの大きさによるスムーズな加速をあげたい。
一度この静かさとトルクの大きさを味わうと二度とエンジンの騒音と振動に戻りたくない。
つまり、この乗り心地のよさから、電気自動車の潮流は避けられないと思う。

電気自動車の課題は、航続距離と充電時間、
バッテリー用リチウムとが有限資源で、中国や、南米にあること、
エンジン無しで暖房をどうするかという問題に限られる。

かつての排気ガスのマスキー法で決められた排出値をクリアする方がはるかに難しかったと思う。

私は通勤に使う街中を走る車は二人乗りの電気自動車になると思う。
一方、もう一台、ご家庭には、軽トラックや、ミニバンや、SUVや、4輪駆動車を提供する機会があると思う。
軽トラック、ミニバン、SUV、4輪駆動車はエンジンも使うハイブリッドとする。
悪路を走行したり、長い航続距離を走るのにはエンジンのアシストがあるほうが良い。

そうすれば、エンジン関係部品メーカーは生き残れるし、中国などもそう簡単には追いついてこれない。
二輪車についてもファミリーバイクは電気、遊びはハイブリッドでいけると思う。

このようなグランドデザインの基に、アメリカや欧州と協調してまた切磋琢磨して、
衝突安全性、燃費規制に各国の独自規制をまぶして、
ちょっとやそこらの技術では車作りができないように政策的に持っていく必要がある。

余談であるが国会議員うちの500名は不要ではないか?
そうすれば議員経費が500億円浮くし、官僚がやたら法律を書き直す無駄な仕事も減るし波及効果は数千億になる。
これだけのお金をかけると、投資効果の大きい仕事はまだある。
例えば海中からのリチウム回収のように。
またリチウムを利用した核融合発電のように。

2009-09-16

ホンダインサイトの特徴









ホンダハイブリッドシステムは、エンジンとモーターが直結している。コントロールユニットとバッテリーはリアに置かれる。モーターはDCブラシレスモーターである。 エンジンは1.3L i-VTECで必要に応じて全気筒を休止する可変シリンダーシステムである。モーターはエンジンをアシストする。減速時はモーターでエネルギーを回生し、停止時にはアイドリングストップする。CVTは発進時のストール回転数を下げ、より低い回転でクラッチをつなぐ制御を導入している。バッテリーはニッケル水素で7本のモジュールを採用している。バッテリーとPCUを2段重ねにした構造である。



出典:CarGraphicTV最新の日本車特集20090425

2009-09-15

三菱アイミーブの特徴






i-MiEVはリアミッドシップレイアウトで、エンジンが搭載されていた位置にモーターやインバーター、車載充電器などを載せ、ガソリンタンクが積まれていた床下にはバッテリーを配している。重いバッテリーを床下に置いたことで重心が下がり、走行安定性が高まっている。バッテリーは、小型のリチウム電池を直列に88個つなぎ、電力量16kWhを得ている。このリチウムイオン電池は、バッテリーメーカーのGSユアサと三菱商事、三菱自動車工業の3社で共同設立した「リチウムエナジージャパン」で製造する。モーターは最大出力47kW、最大トルク18.4kg-m/0-2000rpmで、軽自動車の2倍のトルクを低速から発生させる。一充電で走行可能な航続距離は国土交通省基準の10.15モードで160kmをである。
 マイコンコントローラーでバッテリーのモニタ、トラクションコントロール、回生ブレーキ、パワーセーブ、スムーズな発進制御の推定制御を行う。

i-MiEVは2通りの充電方法を用意している。ひとつは、一般家庭で使用されるAC200VとAC100Vに対応、200Vの場合約7時間、100Vの場合で約14時間で満充電する。ふたつは、急速充電器を備えており、三相200V 50kWの電源から30分で8割の充電をする。既にショッピングセンターや高速道のパーキングエリアなどに試験的に設置が始まっている。今後三菱系コンビニやガソリンスタンド、ファミレスなどへの設置が予定されている。

下記の動画で分かるように、電気自動車の最大の特徴はエンジン音がしないことである。とても静かなことである。一度この静かな車に乗るともうエンジン音のする車には戻れない。つまり電気自動車の最大の魅力は、静かなことである。次が燃費が安いと言うことである。

2009-09-14

GMボルトの特徴









GMボルトはエンジンは電池の充電専用に使われる。走行動力源はモーターだけであるので130kwの高出力モーターを採用している。ボルトには16kwhのリチウムイオン電池が搭載されている。この電力は、一般家庭の1日で消費する電力量である。フル充電時の最大航続距離は40マイル(約64km)。バッテリー残量が少なくなると、発電用の1.4リットル直4エンジンが始動。ジェネレーターを回して、モーターに電力を供給するとともに、バッテリーを充電。その結果、航続可能距離は480km以上まで伸びる。
最近GMの燃費が230MPGと発表され話題になった。GMの燃費は、EPA(米国環境保護局)が年内に導入予定の新燃費基準に基づいて行われた。

GMはEPAの新燃費基準に基づき、バッテリーだけで走行可能な40マイル(約64km)を走行後、11マイル(約18km)を充電用エンジンを回しながら走った。トータル51マイル(約82km)を走行した時点で、ガソリン消費量を計測した。
ボルトは0.22ガロン(約0.83リットル)のガソリンを消費した。
燃費を計算すると、51/0.22=231。つまり、230MPG(約98km/リットル)になった。

GMは「230MPG」のフレーズをキャンペーン名称として使っており、「世界一の燃費性能を達成」と、ボルトの燃費の良さを大々的にPRしている。

EPAの燃費基準がGM救済に作られているとは思えないが、法規にはこのように一見おかしいところがある。法規をうまくクリアーしPRに利用する事が大事な戦略である。

2009-09-11

BYDのリチウムイオン電気自動車


BYDは中国のリチウム電池のOEMメーカーとし、携帯電話では日本の三洋につぎ世界シェア2位である。すでにリチウムイオン電池の分野では確固たる地位を確立している。
 昨年9月、著名投資家であるバフェット氏が2億3000万ドルを投じてBYDの約10%の株式を取得した。

BYDは自動車産業に参入してわずか5年という後発組で、自動車の経験が浅く、他の自動車のデザイン面やドイツ国内で行われている衝突安全性実車テストでも評価が低かった。
車体強度やデザインの面では遅れが目立つが、ドライブトレインの性能はどれほどのものであろうか。内燃機関を使わないと電池とモーターとコントローラーの制御能力であるのでキャッチアップは意外と早いかもしれない。

以下は中国経済・産業ニュース記事。


2009年 7月 06日(月曜日) 17:04

中国・広東省に本社を置く自動車メーカーでリチウムイオンバッテリーの生産も手掛ける比亜迪(BYD)の販売責任者は5日、2009年内にオーバー Cセグメントクラスの電気自動車(EV)「E6」の量産を開始することを明らかにした。販売価格は当初の目標として30万元を計画する。6日付で複数の香港メディアが伝えた。

「E6」は四輪駆動で、最高時速は160キロメートル。SUV(スポーツ多目的車)とミニバンの2つの概念を兼ね備える。駆動・起動用バッテリーに自社開発した鉄電池を採用し、1回の充電で連続走行できる距離は300キロメートル。燃料コストを一般のガソリン車の3分の1から4分の 1に抑えた。

国内投資銀行のアナリストによれば、EVということもあって価格は高めだが、商用SUVとして政府や企業からの支持を得やすく、昨年12月に発売したプラグインハイブリッド車「F3DM」よりもポテンシャルは大きい。同担当者は、政府もしくは特定企業への販売を優先するかとの質問に対し、「発売時期は確定したが、販売計画の詳細は未定」と答えた。

2009-09-10

今後の電気自動車生産台数、リチウム電池生産量


出典:Chemetall

Chemetall社では2,012年には世界で250万台のハイブリッド、電気自動車が生産され、2,015年には480万台が生産されると予想している。そのうちリチウム電池は、2,012年には世界で80万台、2,015年には380万台がリチウム電池で残りがニッケル水素電池としている。バッテリーメーカと自動車メーカーまたは部品メーカーの関係は下記である。



トヨターPanasonic EV Ebergy
日産ーNEC
Boshu-Samson
本田ー三洋
Fordー三洋
Audiー三洋
GMーA123、cpi、LG、Continental
HyundaiーLG
三菱ーGS YUASA
BenzーContinental

現在リチウム電池では、日本、韓国、中国が生産量の御三家である。
各国バッテリーメーカーは自動車会社と共同し、新世代向けPHEVおよびEV向けにしのぎを削っている。



出典:Chemetall

2009-09-09

海水からのリチウム分離

海水リチウムを抽出するプラントが日本を中心に稼動しており、現状よりさらに低コストで採掘できるようになれば、リチウムの資源問題が解決する可能性がある。産総研 四国センターや北九州市立大学で研究が進められている。
海水中には低濃度であるが、リチウムが含まれている。0.1ppm程度であるが世界全体では2,300億トンになる。回収技術が確立されれば、リチウムの輸出も可能になる。ひとつの方法は、スピネル結晶構造を持つマンガン系吸着剤を用いることである。スピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn2O4 は,可逆的にリチウムイオンを出し入れすることができる。リチウムマンガン酸化物のリチウムイオンを、水素イオンに交換できるイオン形状記憶化合物は、リチウムの大きさを認識して吸着を許す。海水中にある高濃度のイオンナトリウムなどは原子の大きさが大きいため通さない。吸着したリチウムを容易に酸で分離させることができる。空孔は、リチウムイオンの大きさを覚えており、再びリチウムイオンを吸着する。

出典:北九州市立大学

スピネル結晶構造を持つマンガン系吸着剤は、鋳造に使われる鋳型の原理を応用して作られる。まず、担体となるマンガン酸化物とリチウムを混ぜ、加熱・反応させて、リチウムと金属の複合酸化物を作る。次に酸で処理することによってリチウムを溶かし出し、リチウムにピッタリのサイズの細孔を作る。これがリチウム吸着剤となる。


四国センターでは、海流や発電所の温排水などの流れをうまく利用した低水圧型吸着装置の研究を実施している。

一方、お隣の韓国でも海水から羅のリチウム回収が進められている。
【ソウル6日聯合ニュース】国土海洋部は韓国地質資源研究院は6日、海水に微量(1リットル当たり0.17ミリグラム)に含まれているリチウムだけを選別し、抽出する高性能吸着剤の製造技術を開発したと明らかにした。
 この吸着剤は特に、吸着用粉末1グラム当たり45ミリグラムのリチウムを得ることができ繰り返し使用可能との点で世界最高レベルの技術だと、国土海洋部側は説明している。政府は同技術を基に2014年まで年間10トンのリチウムを回収・生産可能なプラント施設を建設し、本格的に使用を進める計画だ。
リチウムは携帯電話、ノートパソコン、ビデオカメラなどの電子機器、ハイブリッドカーや電気自動車の燃料として使われるだけでなく、今後は次世代核融合発電の燃料としても活用可能なため、国レベルで戦略的に管理している。韓国は昨年だけで11万トン、6億ドル(約589億円)分のリチウム電池・原料など関連製品や化合物を輸入した。
 政府は今後、原子力・火力発電所で排出される温廃水を対象にリチウム抽出技術を適用する場合、毎年2万トンの炭酸リチウムを生産でき、約2億ドルの輸入代替効果が得られると期待している。

2009-09-08

リチウム

原子番号 3の元素。元素記号はLi。アルカリ金属の一つ。
常温で安定な結晶構造は、体心立方格子 (BCC)。比重は、0.53、融点は摂氏180℃、沸点は摂氏1330℃(沸点は異なる実験値あり)。銀白色の柔らかい金属でありナイフで切ることが出来る。ナトリウムよりは硬い。同じアルカリ金属のナトリウム、カリウムと比べて反応性は劣り、化学的性質は、アルカリ土類金属、特にマグネシウムと類似するのが特徴。
乾いた空気中ではほとんど変化しないが、水分があると常温でも窒素と反応し窒化リチウム(Li3N) を生ずる。また、熱すると燃焼して酸化リチウム(Li2O)になる。このためリチウムを金属として取り扱う場合はアルゴン雰囲気下で取り扱う必要がある。
。1817年、スウェーデンのアルフェドソンがペタル石の化学分析い、炎色反応によって、新しい元素があることを発見した。ペタル石の他にリチア雲母とリチア輝石が、リチウムの主要な鉱石として採掘されている。


リチウムは大気中では容易に酸化され、単体金属として存在することは難しい。このため、単体の金属材料として利用されることよりも、軽量合金に用いたり、強力な還元剤または有機リチウム化合物の原料として用いられることが多い。

核融合発電および水素爆弾において、核融合反応の材料である三重水素を生成するために使用される。

代表的なリチウムの化合物として、以下のものが知られている。

* フッ化リチウム (LiF)
* 塩化リチウム (LiCl)
* 臭化リチウム (LiBr)
* ヨウ化リチウム (LiI)
* 窒化リチウム (Li3N)
* 水素化リチウム (LiH)
* 酸化リチウム (Li2O)
* 炭酸リチウム (Li2CO3)
* 過塩素酸リチウム (LiClO4)
* ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6)
* ニオブ酸リチウム (LiNbO3)

炭酸リチウムは結晶化耐熱ガラス、テレビのブラウン管、陶磁器の釉として利用されていた。最近はリチウムイオン蓄電池の材料として多く取引されている。、水酸化リチウムが添加されたグリースが自動車・農機具・機械工具などの潤滑剤として市販されている。

医療用として炭酸リチウムが躁病および躁うつ病の躁状態の患者に処方される

2009-09-07

リチウムイオン電池の構造

リチウムは酸化還元電位が3.03Vと最も高い金属であるため電池の負極として用いると高い電圧が供給できる。また、水素、ヘリウムの次に原子の大きさが小さいため、容量が非常に大きくマンガン乾電池の約10倍確保できる。放電末期まで電圧降下が少ないのも特徴である。しかし二次電池の負極に金属リチウムを用いると,充電時にリチウム電極上にリチウムの針状結晶が生成して(デンドライト析出)セパレーターを突き破る危険性があるため,リチウムイオン二次電池の実用化は困難であった。
そこで、リチウムを化学結合させない、リチウムイオンだけを吸蔵できるホスト化合物を探す研究が進み,80 年代に黒鉛が可能であることが明らかになった。
同時期に,LiCoO2 が正極材料として有望であることも明らかになり1990 年にはリチウムイオン二次電池が商品化された。



現在市販されているリチウムイオン二次電池には,負極活物質として層状の黒鉛(C)が,また正極活物質としてはコバルト酸リチウム(LiCoO2),またはマンガンスピネル(LiMn2O4)が用いられている。コバルトが高価なため、性能は落ちるがマンガンが主流となる。



二酸化マンガンリチウム電池は、正極に二酸化マンガン、負極に金属リチウム、電解液には、有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものを用いている。化学反応式は次の通りである。

充電時は,マンガン酸リチウムから引き抜かれたリチウムイオンが黒鉛中に入る。つまり,リチウムイオン二次電池における充放電反応はリチウムが正極・負極間を移動するだけであり,鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池などのように,電極の構造そのものが変化したり,新たに化合物が生成したりするのではない。

放電その逆でありには,負極物質である黒鉛からリチウムイオンが電解質中に引き抜かれ,電解質中を通って正極活物質であるマンガンスピネル(Mn2O4)の構造中に入る.ここで外部回路を通ってきた電子を得て,マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を生成する.

2009-09-06

炭酸リチウムの値段と自動車の使用量


出典:国際レアメタル&リサイクル研究会

炭酸リチウムは電池の容量(キロワット時)当たり約1.5キログラム必要であるといわれている。炭酸リチウムの価格は、2004年までは1キログラム当たり100円、2008年6月には800円を超えた。(1RMB=13.55円で計算)。しかし、その後世界的な不況で商品市況が暴落した。2009年3月では508円である。プリウスの電地容量は約5kwhである。必要な炭酸カルシウムのコストは、3,800円である。プラグイン式電気自動車では電池容量が一気に増大する。例えばアイミーブは16kWhであるので、炭酸リチウムのコストは、12,000円になる。日産の電気自動車は、アイミーブの1.5倍といわれているので、炭酸リチウムのコストは、18,000円、重量は35kgと予想される。
Salar de Atakamaの炭酸リチウムの生産量は年間5万トンであるので、全てを、自動車用35kgに使うとすると、140万台分の電池が作れる計算になる。しかし、リチウムは他の用途ににも使われており、世界的にリチウムの需要が足りなくなる。リチウム電池の主要生産国である韓国、日本は、原料リチウムを輸入に依存している。リチウムの埋蔵地域は南米と中国に偏在していることが懸念として挙げられる。海水中にはほぼ無尽蔵にリチウムが存在するので、分離する技術開発が研究されている。

出典:国際レアメタル&リサイクル研究会

尚、リチウム電池の正極にコバルト酸リチウムを使う場合、コバルトが希少金属で値段が高いので、コストがかかる。現在キログラムあたり3,400円くらいである。現在はコバルトの変わりにコストの安いマンガンを使う方が一般的になってきている。

2009-09-05

アタカマ塩原におけるリチウムの製造方法

アカタマ塩原をグーグルマップでズームアップしてみると、巨大な濃縮地を監察できる。上がSQM社下がChemetall社である。現在、最大のリチウム生産国はチリ。チリのリチウムの特徴は生産・輸送コストが安く、また確認可採埋蔵量が多い点である。国内の2社が世界のリチウム生産をリードしている。97年に稼動したチリ内資企業SQMと84年から操業しているドイツのChematallのチリ現地法人Sociedad Chilena de Litioである。いずれもアタカマ塩湖で原料となる塩水をくみ上げ、プールで天日乾燥した上で、200キロ離れたアントファガスタ市巨大トレーラーで運び、そこで炭酸リチウムを生産している。

SQMはもともと肥料に使用される硝酸塩カリウムや、ヨードの世界最大メーカーである。リチウムは塩水から硝酸塩カリウムと一緒に産出される副産物だが、生産量は世界市場の40%以上を占め世界最大。アタカマ塩湖鉱区10ヵ所のうち9ヵ所の利権を確保し、残り1区がChemetallのものとなっている。
カナダの肥料会社PCSがSQM経営権の取得を狙っている。同社の意図は、世界最大の肥料(硝酸塩カリウム)メーカーの経営権確保にある。PCSは世界最大の肥料会社であり、肥料市場の寡占化を狙い、リチウム資源確保も考慮に入れている。しかし、SQMのチリ人実業家が拒否している。

また、中国の需要増に伴い、中国企業がチリのリチウム資源を確保するためにSQMへの出資や鉱区権取得の動きが注目される。中国市場ではリチウム買い付け価格が高騰しており、日本市場への供給が逼迫する恐れが十分にある。










出典:Chemetall

チリ首都サンティアゴ北方約1,700kmに位置するアタカマ塩原にChemetall社のプラントがある。アカタマから200km西のアントファガスタに精製プラントがある。



出典:Chemetall

9x4kmの広大なかん水池で1年間かけリチウム化合物を結晶化させる。

アタカマ塩湖の湖面を形成する岩塩は空隙率が24%であり、かん水はこの岩塩中の空隙を満たしている。かん水汲み上げ用坑井が20ヵ所に存在している。汲みあげたかん水のリチウム濃度は0.2%程度である。かん水を蒸発池に溜め、水分を蒸発させる。蒸発池の面積は1,000万平方メートルと巨大である。リチウム濃度が0.9%になるとリチウム濃縮池に移される。濃縮池では12~15ヶ月かけリチウムの濃度を6.0%にまであげる。効率よくかつ池全体で濃度差なくリチウムを濃縮するためには、蒸発池の形状、深さ、アンデス山脈からの風向き等を考慮する必要があり、同社では蒸発池の水位、電気伝導度及びかん水サンプル採取を毎日実施している。6~7月の冬期は低温の影響でかん水中のMg分が沈殿しないためプラントは操業を中止する。6%になるとマグネシウムとリチウムと塩素の混じった結晶が沈殿する。

濃縮かん水からホウ素を除去する際には有機抽出剤による溶媒抽出法が用いられるが、アタカマ塩原では標高が高いために気圧が低く、有機抽出剤の揮発が著しい。そのためこのプロセスを効率的に行うことができない。したがって濃縮されたかん水は、アタカマ塩湖西方230kmの標高の低いアントファガスタ近郊カルメンに所在するCemetall社の精製プラントまで巨大トレーラーでで運搬される。精製には1日を要し、最終製品はアントファガスタから外国へ輸出されている。



出典:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

2009-09-04

世界のリチウムの埋蔵量と生産量


出典:Chemetall社
塩原のリチウムの埋蔵量は1位がチリで690万トンである。2位はボリビアで550万トン、3位がアルゼンチンおよび中国で共に260万トンである。アメリカにも4万トンの埋蔵がある。
鉱山のリチウムの埋蔵量は1位がアメリカで280万トンである。2位はアフリカで230万トンである。以下は中国、オーストラリア、ヨーロッパ、ロシア、カナダで産出される。

2005年における世界のリチウムメタルの生産量は2万1400トンであった。そのうち主要生産国はチリが8000トン、オーストラリア4000トン、中国2700トン、ロシア2200トンそしてアルゼンチンが2000トンである。中国のリチウムの大半は、青海の塩湖で産出される。さらに青蔵鉄道完成とともにチベットの塩湖でも小規模の生産が始まった。

世界のリチウム埋蔵量のうち、広大な塩原のあるチリとボリビアで世界生産量の7割を占める。チリ北部に位置するアタカマ塩原(Salar de Atakama)の炭酸リチウムの生産量は年間5万トンである。未開発ではあるが埋蔵量ベースで世界の30%近くはウユニ塩原(Salar de Uyuni)にある。アタカマとウユニいずれも太古の時代には内海が急激な造山活動で標高3000メートル以上になり、水が永い間かけて干上がった極めて珍しい地形である。ボリビアのウユニとチリのアカタマ塩原の位置関係は下記のとおりである。

出典:googlemap

2009-09-03

リチウムの巨大埋蔵地ーウユニ塩原


出典:GOODMagazine
ウユニ塩原はボリビアにあり、ハワイやニュージャージー州ほどの面積を有する地球で元も平らな場所である。NASAでは衛星からの距離測定時にキャリブレーションとして使っている。このビデオでは、ウユニ塩原の宇宙からの眺めなどが紹介されている。

リチウムの元素記号はLi。金属で最も軽い。パソコンや携帯電話、ハイブリッドカー、電気自動車のリチウムイオン電池や冷媒吸収剤、除湿剤などに使用され、今後、大幅な需要増が見込まれている。日本の炭酸リチウムの輸入量は2001年に6843トンだったが、06年は1万4521トンに急増した。輸入先はチリ、中国、米国の順で多い。

ウユニ塩原(Salar de Uyuni(スペイン語))は、ボリビア中央西部のアルティプラーノにある塩の大地。標高約3,700mにある、南北約100km、東西約250km、面積約12,000km2の広大な塩の固まり。塩原の中央付近で回りを見渡すと視界の限り真っ白の平地であり、寒冷な気候もあって、雪原の直中にいるような錯覚をおこす。
塩原があるアンデス山脈は、比較的短期間に海中から隆起して形成された。このため、大量の海水がそのまま山の上に残されることとなった。

塩原の周囲に住む人たちは、塩を国内外に販売している。一般の食用の塩は、湖の表面の塩を削り取り1m程度の高さの小山を作って乾燥させて作る。

この塩は近年日本でも購入できるようになった。また、塩原に斧で切れ目を入れ、数十cmないし1m程度の大きさの立方体に切り出すことも行なわれている。この塩のブロックは、家畜放牧地にそのまま置いて家畜になめさせたり(家畜のミネラル補給)、ブロックのまま別の塩精製施設に運んだりして使われる。塩原周辺では塩のブロックを建材に使って家などを作ることもある。

電気自動車の電池などリチウム需要は将来的に高まると予想され、新たなリチウム産地としても注目されている。2009年現在は本格的な生産は行われていないが、ボリビア公社事業として2010年を目標にパイロットプラントの設置が進められている。事業には日本の住友商事、三菱商事、フランス・ロシアのグループが参画を目指しているが、政情が安定しないので、許可されるかどうかは難しいと言われている。

2009-09-02

恒星の一生と地球にある鉄や金との関係

現在地球にある、金やウランは超新星の大爆発によって宇宙に放出された原子が集まってできた。

星は星雲中の水素が収縮することによって作られる。

太陽の8倍に満たない一般的な質量の恒星は、赤色巨星となったあと、外層が周囲に吹き飛び、惑星状星雲を形成する。中心部は収縮し白色矮星となる。
太陽の8倍以上の質量の恒星は、その最期には大爆発を起こします。これが超新星爆発と呼ばれる現象で、その明るさは銀河1つ分に匹敵するくらいになる。

原子はは周期表の順番に従って変化する。恒星が最初に輝く核融合反応つまり水素(H)からヘリウム(He)への変化は、最もエネルギーを必要としない。周期表で後にある物質、例えば金などの元素を生むためには、とてつもないエネルギーが必要であり、太陽では作れない。そればかりか、水素からヘリウムへ変化させるのに必要なエネルギーの数万分の1程度しか現在の人類では作れない。核融合発電が可能になりなは、早くても50年かかると言われている。

星は中心部で水素(H)がヘリウム(He)に変化するとき、ガンマ線として放出されたエネルギーで電子や陽子と相互作用をして太陽内部を加熱する。この熱エネルギーによるガスの熱運動が自己重力による収縮に拮抗し、太陽の形が保たれる。

質量が太陽の8倍未満の恒星の場合、中心部ではさらに核融合反応がが進み、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)の7種類の原子が出来る。この星は最後には「惑星状星雲」や「白色矮星」になる。

質量が8倍以上12倍未満の星では、中心部ではさらに物質の変化が進み、マグネシウム(Mg)までの原子を生み出すことができる。この星は「超新星爆発」という、大爆発を起こし、全体が吹き飛んでしまう。

質量が12倍以上30倍未満ある星の中心ではさらに変化が進み、ケイ素(Si)までの物質を作ることが可能である。この星は超新星爆発を起こし、中心部には「中性子星」を残す。

質量が太陽の30倍以上の星の中心部では鉄(Fe)までが作られる。地球にある鉄はこのように作られた。この星も超新星爆発を起こし、、中心部には「ブラックホール」を残す。
鉄以上の原子つまり金やウランなどは通常の核融合でなく、超新星爆発の巨大なエネルギーで一気に作られると考えられる。または、中性子星同士の衝突や、ブラックホールの崩壊のエネルギーで作られると考えられる。

2009-09-01

リチウムの起源(ビッグバンの初期に作られる)

リチウムは陽子3個、中性子4個に、電子3個を持った元素である。
ビックバン理論によれば、核子はビックバン後宇宙の温度が約200MeV(約2兆K)まで冷えたところで、クォークグルーオンプラズマから生成される。ビッグバンから1秒後、陽子と中性子から出来た重水素原子核の核融合が始まる。3分後、重水素原子核融合により大半のヘリウムと、わずかなリチウム、ベリリウムの原子核が合成され終了し、宇宙はプラズマ状態となる。10万年後 温度が下がり、陽子が電磁気力によって電子を捕らえ、水素やヘリウムの「原子」が誕生する。電子に遮られていた光が通るようになり、宇宙が晴れ渡る。このようにビッグバンの初期に陽子と中性子からはじまり、リチウム7とベリリウム7までの原子核が生成される。中性水素(1H)とヘリウム4(4H)は安定であるので、この2つの核種が多く蓄積する。この最初の原子核合成は、ビックバン原子核合成と呼ばれる。

炭素や酸素といった元素の原子核合成は、ビッグバンの後期に作られた恒星での核融合や核分裂により生じる。100万年後ヘリウムより重い安定核種が恒星の中で作られる。太陽の様な普通の質量を持った恒星のなかでは、まず、水素が核融合してヘリウム4が生成される。ヘリウム4が2つ集まるとベリリウム8が合成され。8の核種は不安定であり、すぐに崩壊してしまう。しかし、恒星内部にヘリウム4が蓄積され、十分大きな密度と温度になると、ベリリウム8が崩壊するまでのわずかな間にヘリウム4が融合して炭素12が合成される。この炭素12は安定である。炭素12とヘリウム4の融合は酸素16を、酸素16同士の融合はケイ素28とヘリウム4を合成する。このように炭素12の合成により、その後の核反応プロセスが続いていくことが可能になる。恒星の内部ではこの先も幾つかの過程を経て鉄までの軽い核種合成が可能である。鉄56とケイ素28は全核種の中で最も安定な核種であり、多く存在する。普通の大きさの恒星ではこれ以上に重い核種は合成されない。

式で書くほうが分かりやすい。
He4 + He4 → Be8 :ベリリウム8を作る
Be8 + He4 → C12 :炭素8を作る
C12 + He4 → O16 :酸素16を作る
O16 + He4 → Ne20 :ネオン20を作る
等など

太陽よりも巨大な質量を持った恒星は赤色巨星となる。巨大な恒星がその寿命を終える時、超新星爆発を起こす。恒星の中心部がすさまじい重力を支えきれずにつぶれて原子核同士が接触するほどになり、多くの核反応が起こる。金79やウラン238以上の重い核種までを一度に大量に合成する。生成された重い核種の多くは不安定で、すぐに崩壊して鉄56などの安定な軽い核種へと移行する。ビスマス209 の様な長寿命元素は現在でも地球に存在している。ウラン238より重い原子核の寿命は地球の年齢約46億年よりかなり短いため、現在の地球には存在しない。