今日は、レバレッジ金融工学について考えることを述べます。
アメリカ.中国.日本それぞれの抱え込んでいる経済問題の根源は、今から30数年前の、ブレトン.ウッズ体制の崩壊にある。アメリカの金の備蓄高がドルの発行残高を決定し、その他の国々の通貨の発行残高はその国のドルの保有高によって決定されるというブレトン・ウッズ体制による歯止めが失われた結果、世界経済の不均衡ーアメリカの対外債務の爆発的増大ーは、とどまるところを知らなくなってしまった。
その間に「投資銀行」が金融工学を駆使し資本主義の主役として、台頭した。
1998年にロングターム・キャピタル・マネジメントという大手ヘッジファンドが巨大なレバレッジを抱えて破たんした。与信を抱えている金融機関の連鎖破たんによる世界の金融システムの大混乱を回避するために連邦準備銀行は、問題資産・負債を民間金融機関が買い取らせた。
それから更に10年間を経て、今度はロングターム・キャピタル・マネジメントという一社のみでなく、世界の「投資銀行」の崩壊が恐ろしい現実のものとなってしまった。原因は、過剰なレバレッジである。
「投資銀行」は、証券化やデリバティブにし、小資本で、大きく収益性を上げるレバレッジを駆使している。同じ方向にトレンドが動いている時であれば、てこの原理で、レバレッジの端は、大きく同じ方向に動く。しかし、方向が逆転した場合、てこの端は大きく逆に反転し、運転資金が枯渇し突然死に至る仕組みになっている。FXもそうである。
住宅を買った国民の「ライアビリティ=負債として毎月払わなければならないお金」は銀行では「アセット=毎月国民から支払われるお金」として勘定される。毎月国民から支払われるお金が証券化され、レバレッジをかけて儲けようとたくらんでいたレバレッジ資本主義がロングターム・キャピタル・マネジメント一社だけでなく、全世界で行われてるようになってしまった。ロングターム・キャピタル・マネジメント=LTCMはノーベル賞受賞者が2 人いた。一人はコンピュータ・サイエンス出身の金融経済学者でスタンフォード大学教授マイロン・ショールズ(Myron Scholes)、もう一人は数学出身の経済学者でハーバード大学教授ロバート・マートン(Robret Merton)である。2 人は 1997 年、フィッシャー・ブラック(Fischer Black)と共同で導出に成功した、「ブラック・ショールズの公式」(Black-Scholes formula)で知られるデリバティブの価格付け理論によりノーベル経済学賞を受けている。
LTCMの破綻は米国債の価格トレンドとロシアの債権の価格トレンドを、コンピュータが突き進みすぎた事と記憶している。LTCMは世界中の債権の理論価格を算出し、わずかなスプレットを、大きなレバレッジを賭けることで取りに行くコンピュータープログラムであった。しかし、いつかは、債権は償還されるという、時期を待たないで、人間がロシア債権を売りすぎ、米国債を買いすぎていたため短期的に、過剰な損失が発生した。
10月15日グリーンスパンは危機以来2度目の利下げを実施し、LTCMは4月以来6ヶ月に及んだ50億ドルという損失を計上したが、追証の返還ができた。
従って理論は間違っていなかったとして、ニュースでは忘れ去られた金融工学がコンピュータが判断するシステム金融工学として、世界中で取り入れられた。
たとえば、LTCMの中心メンバーは1999年末、レラティブ・バリュー・オポチュニティ・ファンドⅡという名の新たなパートナーシップの募集要項を配布した。そこには、新たな危機管理システムを導入した上、レバレッジを比較的安全な15倍程度に抑えると記してあった、
また、LTCMのノウハウは人と共にゴールドマンザックスなどに、流れ、さらにレバレッジ金融工学が資本主義の主役として、「人が苦労して働く」のではなく「コンピューターが判断しお金が働く」時代になったかの錯覚を与え、実体のない仮想レバレッジを掛け破綻している。
私は、自分で作った物=ソフトを売るのが楽しみである。ソフトの中には、多くの時間をかけて発見し、苦労してできたノウハウがはいっている。だから自社の物を売る方が、他社の物を売るよりも大切と思っています。労働の価値もそんなところにあるのではないか。